Hirai Takayuki

2-12 計算結果の精度の検討方法

2-12-1 計算結果の妥当性の検討

1)NCRとILLの値

計算結果の出力デ-タのNCRとILLの値が共に0でなければ、計算過程に異常があり、計算結果は妥当でなく採用できない。モデル作成が不適切であったためか、モデル入力デ-タの数値の誤りが原因である。

2)X方向とY方向における表面力の釣り合い。

計算結果の出力デ-タの最後の FORCE BALANCE の所で X-TRA の値に対する X REG の値の割合と Y-TRAの値に対する Y REG の値の割合が、いずれのブロックについても、またそれらの合計についても小さいとき、計算結果は妥当であるといえる。この割合が表面力の釣り合いの誤差を表している。

3)表面力の釣り合いの誤差が大きい場合

2)の表面力の釣り合いの誤差が大きい場合は、作成したモデルが適当でなかったと考えられる。2-8節と2-12-2項を参考にして、モデルの作成をやり直す必要がある。

なお2-9節の要素の種類を指定した計算により、良い精度の結果を得られることがある。

どのようなモデルを用いても、2)の表面力の釣り合いの誤差を小さくできない場合は、3章の有限要素法で計算する。

4)その他の検討項目

計算結果の妥当性は一般に1)と2)で検討する。さらに細かく検討する項目としては、次のようなものがある。

・各ブロックごとに見た表面力によるモ-メントの釣り合い。

・接合または接触した要素間の表面力の釣合と、変位の近似性。

・計算結果と、モデルに与えた境界条件の表面力と変位との近似性。

・表面力に対して、その要素の表2-5の7)に示した重み荷重の値が異常に大きくならない。

・平行移動や回転の剛体変位を生じる場合は、変位全体に対する剛体変位の値の割合がそれほど大きくならない。

 

2-12-2 計算結果に含まれる誤差の検討方法

1)誤差を調べることができる理由

2-11-1項で説明したように、計算結果は境界条件を近似する理論解であるから、計算結果の境界上の表面力と変位を、境界条件で与えられた表面力と変位と比べ、両者の違いを調べることにより、計算結果に含まれる誤差を調べることができる。誤差のない解は一般に不明であるが、そのような場合でも計算結果に含まれる誤差を調べることが可能である。

2)全体的な誤差と局所的な誤差

2-12-1の2)で述べた表面力の釣り合いにおける誤差が、問題のすべての領域に影響する全体的な誤差である。

問題の境界条件で与えられた変位また応力度と、計算結果の変位または表面力の分布状態の差が、局所的な誤差である。これらの分布状態はモデルの要素上で線形に置き換えたものでなく、本来の複雑な分布状態(2-11節に図形表示の方法を示す)のことである。

局所的な誤差は要素上の分布状態の誤差であり、合計と1次モ-メントが等しい場合はサンブナンの定理より、表面力の分布状態の誤差はその要素から要素の長さ以内の距離の部分に影響する。

3)誤差の計算

誤差は全体的な誤差と局所的な誤差の和として表すことができる。計算方法は1-1-10項の参考文献に詳しく説明しているので、そちらを参照下さい。

 

2-12-3 数値計算の有効数字

数値計算における変数の有効数字は単精度である。有効数字を倍精度にしても、計算結果に含まれる誤差は、ほとんど変わらない。

参考のために、I2D500.EXE、 I2D1000.EXE、I2D2000.EXE のファイルを用いて計算すれば、有効数字を倍精度にした計算ができる。これらは I2V500.EXE、I2V1000.EXE、I2V2000.EXE と同じ方法で使うことができる。

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