Hirai Takayuki

直径の両端に向かい合った集中力が作用する円盤

例題

reidai_tyokkei_1図のように、円盤(円形の平板、厚さが大きい場合は円柱)の直径ABの両端に向かい合った集中力が作用する例題である。

設定条件 厚さt=20mm  直径d=200mm  平面応力状態 ポアソン比ν=0.3  ヤング率E=70000N/mm2 集中力の大きさP=16000N

 

reidai_tyokkei_2設定座標 図のように上端A点を原点とする座標軸を設定する。

数値計算結果と比較するための理論解は、こちらを参照。

「理論解のページ」

 

 

「有限要素法による数値計算例」

次の図のように4つの数値計算モデルを説明する。変位の境界条件としては、y軸上の位置でx方向変位=0、y=-100mmすなわち水平方向の直径上の位置でy方向変位=0とし、応力の境界条件としては、問題に与えられたようにしている。

modelF01は全体のモデルである。左右上下が対称であるから1/4の部分の部分についてのモデルがmodelF02であり、鉛直切断面と水平切断面で面に垂直は方向の変位を0とすれば、モデル設定ができる。なお、この2つのモデルは、全く同じ計算結果になる。データ作成の労力は、modelF02の方が少ない。

modelF03は、要素分割を細かくしたモデルである。集中力の作用点の近傍において応力の変化が急激であるため、この付近の要素分割をより細かくすると計算誤差が少なくなるので、この部分だけを細かく要素分割したモデルがmodelF04である。

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 次の図は、直径AB上でAから円盤の中心までの間の最大主応力の計算結果である。4辺形は要素であり、赤の矢印が引張応力を表し、緑の矢印が圧縮応力を表している。図の上にある赤と緑の短い線の長さが、SCALEの横に書かれた数値の大きさであり、図中の矢印の半分がこれの何倍になるかで、応力の値が表されている。また矢印の方向が最大主応力の方向である。

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 次の表は4つの数値計算モデルの各々について、種々の位置における応力と変位の計算結果を理論値と比較したものである。

直径AB上の最大主応力の理論値は、どこの位置であっても大きさが2P/(πdt)≒2.546であるx方向の引張応力である。上図ですべての位置で、大きさ2.54前後の水平方向を向いた均一な引張応力が理論値であるが、そうなっていないのは、計算誤差のためである。A点の近くで計算誤差が大きい。

modelF01とmodelF02は、要素分割が粗く、計算結果の誤差は極めて大きい。応力が急激に変化するA点の近傍に細かく要素を設定したmodelF04の誤差が比較的小さい。

後に示す境界要素法は、このような問題では有限要素法よりずっと誤差の少ない計算結果が得られるが、境界要素法より有限要素法の方が使い易い場合が多くある。

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「境界要素法による数値計算例」

 次の図のように4つの数値計算モデルを説明する。円周の境界は、線分が連続した境界に置き換えている。modelB01とB02はA点の要素の中央に集中力を与え、modelB03とB04はA点の要素に等分布力を与えている。またいずれもB点の要素にx方向変位=0、y方向変位=0の条件を与えている。

左右上下対称であるから、1/4の部分について計算モデルを作成することも可能であるが、直径AB上の値を求めるので、直径ABは境界から離れて領域の内部にある方が誤差は小さくなるので、全体の領域について計算モデルを設定している。

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 次の図は、直径AB上でAから円盤の中心までの間の最大主応力度の計算結果である。赤の矢印が引張応力を表し、緑の矢印が圧縮応力を表している。図の上にある赤と緑の短い線の長さが、SCALEの横に書かれた数値の大きさであり、図中の矢印の半分がこれの何倍になるかで、応力の値が表されている。また矢印の方向が最大主応力の方向である。

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次の4つの表は各々のモデルの計算結果と理論値の数値を比較したものである。x=0の位置では、x方向垂直応力度が最大主応力度にほとんど一致するので、上の図は、これらの表からx=0の位置でのx方向垂直応力度の値を図示したものになっている。

(x、y)=(0,0)は集中力の作用しているA点であり、特異点のため求められない理論値がある。 ただし数値計算上は、便宜的な近似値を設定している。詳しくは使用説明書を参照してください。

(x、y)=(100、-100)は境界上の要素の接合点であり、最も誤差が大きくなる位置である。この位置の値の計算方法については、使用説明書を参照してください。

直径AB上の最大主応力の理論値は、どこの位置であっても大きさが2P/(πdt)≒2.546の一定である水平方向の引張応力である。

modelB01とmodelB02の計算結果の誤差は、上記の特異点と要素の接合店を除いて、誤差が小さい。modelB01は境界の形状の近似性が悪いにもかかわらず計算精度がよいのは、境界から離れた部分は境界の形状や境界条件の近似性の良否の影響を受けないからである。

modelB03とmodelB04の計算結果には、A点の近くで引張になるべきはずが圧縮になり大きな誤差が出ている。これはA点の所の要素上で、作用している集中力を要素に等分布する力に置き換えて与えたためである。modelB03よりmodelB04の方が、等分布力の分布長さが小さいので、(x、y)=(0、―12)の位置で比較すると分かるように、modelB04の方が集中力が与えられた場合の解に近似している。しかし、modelB04は回転の拘束が十分でないため、変位の計算結果に誤差が生じている。

実際の固体にかかる力は、何がしかの面に分布して作用しており、modelB03やmodelB04の方が現実的な計算モデルである。理論値と比較するためには、集中力の扱えるmodelB01やmodelB02が優れている。

なお、境界要素法ソフトは、境界条件が応力だけで与えられた場合も計算することができる。この場合は、問題の種類により計算結果に大きな剛体変位が含まれると、計算結果の精度が悪くなる。例えば、modelB01やmodelB02で、B点にも集中力を与えて計算すると、含まれる誤差は大きくなる。境界条件が応力だけで与えられた問題でも、計算結果に含まれる剛体変位が小さいときは、精度が良い。

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数値計算モデルのダウンロード

2次元有限要素法 modelF1~4

2次元境界要素法 modelB1~4

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