Hirai Takayuki

1)固体の変形と応力の数値計算方法に関する研究

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1-1 研究の背景

個体に力が作用したときに生じる変形と応力は、弾性力学または材料力学により解明される。

材料力学は、断面の平面保持という仮定による簡略化した計算方法を使い、実用上の障害にならない小さな誤差を含んだ変形と応力を求めるものである。

弾性力学は、固体の弾性的性質の理論式に基づいて、誤差のない変形と応力を計算しようとするものである。限られた問題について理論式を展開して解くことができるが、一般に実際の問題を理論式で解くことは無理である。

20世紀後半からコンピューターが発達したので、弾性的性質の理論式を数値的に近似して、固体の変形と応力を数値計算できるようになった。現在ではコンピューターを使った数値計算法が研究開発され、大変優れたプログラムソフト(ソルバーと言われる)が多く使われている。

数値計算方法として、領域を小さな部分に分割する領域型の有限要素法や差分法があり、また領域の境界を区切る境界型の境界要素法がある。数値計算方法の開発の萌芽期に、数値計算方法の原理、プログラミング、汎用ソフトの開発などの研究を行った。

 

1-2 境界要素法に関する研究

 

a 解法の原理に関する研究

直接境界積分方程式法、間接境界積分方程式法、重ね合わせ法の3つに分類される数値計算方法について考察した。

直接境界積分方程式法は、理論解を計算できる問題は限られており、一般の問題では数値計算結果に大きな誤差を含むことが多いことを示した。

間接境界積分方程式法と重ね合わせ法が同じ計算をしていることを明らかにしたのは、大きな成果であった。

重ね合わせ法により、誤差の小さい数値計算結果が得られることを明らかにした。

研究成果

185  二次元弾性問題を対象とした境界要素法における間接法と直接法について、 昭和57年10月、日本建築学会論文報告集No.320pp45-55、著者:平居孝之

283, 284  弾性解析プログラムとその使い方、昭和59年5月、理工図書、全219頁、著者:平居孝之

184  境界要素法における境界積分と境界値分布関数、昭和58年3月、日本建築学会九州支部研究報告集、著者:平居孝之

 

重ね合わせ法の計算方法に関する研究

重ね合わせ法について、作用する荷重が与えられた場合(いわゆる静定問題)を計算できることが示唆されていたが、変形が与えられた場合や荷重と変形が同時に与えられた場合(いわゆる不静定問題)は計算できていなかったときに、応力と変位のそれぞれの理論解を重ね合わせて計算できることを見出した。

境界条件を境界要素上で離散化するときに、合計とモーメントが等価な分布条件を導入することで、誤差を小さくする計算方法を見出した。

問題に潜在する特異点と数値計算上の特異点(数値が無限大になる箇所)について、誤差が支障にならないように計算できる方法を開発した。

研究成果

@@ 弾性体平板の内部応力計算方法・半無限板法、昭和49年7月、日本科学技術連盟複合材料研究会、第6年度、著者:平居孝之

303  二次元弾性問題の応力解析法・半無限板法、昭和51年7月、大分工業大学紀要第5巻第1号P133ー137、著者:平居孝之

196  無限板法、昭和55年9月、日本建築学会大会学術講演梗概集、著者:平居孝之

190  基本解の重ね合せによる二次元弾性問題の解法の検討、昭和56年9月、日本建築学会大会学術講演梗概集、著者:平居孝之

@@   重ね合せによる二次元弾性問題の解法に関する考察、昭和57年1月、西日本構造解析研究会第71回、著者:平居孝之

188  重ね合せによる二次元弾性問題の解法に関する考察、昭和57年1月、日本建築学会論文報告集No.311、pp1-10、著者:平居孝之

181  二次元弾性境界要素法プログラム、昭和58年5月、日本建築学会論文報告集、No.327pp1-11、著者:岸谷孝一、平居孝之、村上聖

175  境界要素法による弾性体の応力と変形の数値解の精度、昭和59年3月、日本建築学会中国・九州支部研究報告第6号、著者:平居孝之

@@  「二次元弾性境界要素法プログラム」に関する討論への回答、昭和59年9月、日本建築学会論文報告集No.343,P179、著者 岸谷孝一、平居孝之、村上聖)

 

c 境界要素法を用いたJ積分法による応力拡大係数の計算方法の研究

破壊力学で使う応力拡大係数を計算するにおいてJ積分法が使われるが、重ね合わせ法による境界要素法でJ積分を数値計算できる方法を開発した。

村上聖氏が応力場の偏微分値を重ね合わせてJ積分を計算する方法を見出したことは、精度を向上するのに役立った。

後の8-2異種材料の接合面の応力の解析の研究に示すように寺崎俊夫氏が、この数値計算方法を使って応力拡大係数の論文を多数発表した。

研究成果

306  J-Integral Calculations with Boundary Elements  昭和58年11月、Proceedings of the 5th International Conference on Boundary Elements、pp481-493、著者:岸  谷孝一、平居孝之、村上聖)

@@  境界要素法によるJ積分、昭和59年1月、西日本構造解析研究会第81回、著者:平居孝之

308  J-Integral Method in Analysis of Stress ntenstiy Factor Using Boundary Elements、昭和59年3月、Journal of The Faculty of Engineering, The University of Tokyo (B), Vol.XXXVII, No.3(l984) p529-547、共著者 岸谷孝一、平居孝之、村上聖)

123  境界要素法の破壊力学問題への適用(J積分法による応力拡大係数の解析)、平成元年10月、日本建築学会構造系論文報告集No.404、pp25-31、著者:村上聖、岸谷孝一、平居孝之

 

1-3  境界要素法と有限要素法の数値計算ソフトの開発研究

ソフト開発の初めの頃のパソコンは256キロバイトの演算容量があり、これに1024キロバイトのフロッピィデスクドライブを2台外付けして、連立方程式を計算できるプログラムを工夫して作成したが、それでもモデルに設定できる要素数に限度があった。現在はパソコンが発達したのでこのような苦労はない。

境界要素法で使う係数マトリクスは、全要素を使うので記憶容量の縮小はできないが、枢軸の選定により単精度計算で連立方程式を解いても誤差を少なくできた。一方、有限要素法で使う係数マトリックスは、対称行列でかつ記憶が不必要な要素が大変多くあり、スカイライン法で連立方程式を解くことで、係数マトリックスを縮小できた。ただし有効数字を倍精度にして計算しないと誤差が出た。

数値計算におけるモデルデータの自動作成、また計算結果の図形表示のソフトなども作成した。有限要素法では、曲面をもつ3次元形状のモデル化や、それを自由な方向から見たときの図形表示プログラムの作成などが面白かった。

有限要素法の計算方法は出版物を参考にしたが、プログラミングはオリジナルで行った。

境界要素法は計算方法とプログラミングのいずれもオリジナルである。

固体の変形と応力の解析ソフトの提供」のページに載せている数値計算ソフトは、次の研究成果に示すプログラムを機械語に変換して、パソコン上で動くようにしたものである。

研究成果 

283, 284  前出

285, 286 有限要素法と境界要素法-パソコンによる大容量弾性解析-、昭和63年5月、共立出版、全180頁、著者:平居孝之

340 PCによる境界要法と有限要素法に関する大容量計算、昭和63年12月、配管技術第30巻、第14号、日本工業出版、著者:平居孝之

287, 288 パソコン3次元有限要素法、平成2年7月、共立出版、全155頁、著者:平居孝之、寺崎俊夫、村上聖

I2V3000  2次元境界要素法、要素の変位と表面力を計算するプログラム、平成9年、著者平居孝之

I2VDCH  2次元境界要素法、モデル入力データの図形表示プログラム、平成9年、著者平居孝之

I2VDCR  2次元境界要素法、モデル入力データの自動作成補助プログラム、平成9年、著者平居孝之

I2VDR1  2次元境界要素法、要素の変位と表面力の計算結果を図形表示するプログラム、平成9年、著者平居孝之

I2VDR2  2次元境界要素法、内部の応力を図形表示するプログラム、平成9年、著者平居孝之

I2VDR3  2次元境界要素法、要素の変位と表面力の本来の分布状態を図形表示するプログラム、平成9年、著者平居孝之

I2VDSY  2次元境界要素法、2つの部分の入力データを結合して1つのモデル入力データに作成するプログラム、平成9年、著者平居孝之

F2D6000  2次元有限要素法、節点の変位と節点力を計算するプログラム、平成9年、著者平居孝之

F2DCH  2次元有限要素法、モデル入力データの図形表示プログラム、平成9年、著者平居孝之

F2DCR  2次元有限要素法、モデル入力データの自動作成補助プログラム、平成9年、著者平居孝之

F2DR1  2次元有限境界要素法、節点の変位と節点力の計算結果を図形表示するプログラム、平成9年、著者平居孝之

F2DR2  2次元有限境界要素法、内部の応力を図形表示するプログラム、平成9年、著者平居孝之

F2DSD  2次元有限要素法、内部の変位と応力を計算するプログラム、平成9年、著者平居孝之

F2DSY  2次元有限要素法、2つの部分の入力データを結合して1つのモデル入力データに作成するプログラム、平成9年、著者平居孝之

F3D6000  3次元有限要素法、節点の変位と節点力を計算するプログラム、平成9年、著者平居孝之、寺崎俊夫

F3DCH  3次元有限要素法、モデル入力データの図形表示プログラム、平成9年、著者平居孝之

F3DCR  3次元有限要素法、モデル入力データの自動作成補助プログラム、平成9年、著者平居孝之

F3DR1  3次元有限境界要素法、節点の変位と節点力の計算結果を図形表示するプログラム、平成9年、著者平居孝之

F3DSD  3次元有限要素法、内部の変位と応力を計算するプログラム、平成9年、著者平居孝之

F3DSY  3次元有限要素法、2つの部分の入力データを結合して1つのモデル入力データに作成するプログラム、平成9年、著者平居孝之

@@ 有限要素法と境界要素法バ-ジョン2.0、パソコン用ソフト、平成4年11月、共立出版、著者:平居孝之

@@ パソコン3次元有限要素法バ-ジョン2.0、パソコン用ソフト、平成5年9月、共立出版、著者、平居孝之、寺崎俊夫、村上聖

@@ WINDOWS95対応有限要素法と境界要素法、パソコン用ソフト、平成9年6月、共立出版、著者:平居孝之

@@ WINDOWS95対応3次元有限要素法、パソコン用ソフト、平成9年11月、共立出版、著者、平居孝之、寺崎俊夫、村上聖

 

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